プロジェクトA2について
「撮影初期に発表されたスチールにロザムンドクワンの将校姿を見た記憶の方は多いだろう。しかし完成された映画には入っていない。死刑になる同志を救出するという大事なときに相手の疑いを招きやすい扮装をするはずがないとジャッキーは後でおもいつきこの約をサムルに変更して一部のカットを取り直したのだ。なかにはその程度なら映画では許される嘘でありしかもナイトシーンだからもとのままでいいのではないかと思う人もいるだろうが。次に死刑になったジャッキーの死体が見えなくなったときデビッドラムは刑務所長を殺し警察局長にジャッキーが署長を殺して脱獄したと報告するシーンがあったがこのシーンは最終的に使われていない。所長を殺したほうがデビッドのあくどさが強調されていいではないかと思うかもしれないが作劇法としては殺さないほうが上手である。というのは所長を殺すとデビッドの罪状を証明するのにすでに客にはわかっていることをくどくど台詞で説明しなければならないがそうしなかった最終版では局長がデビッドを逮捕するときに所長を登場させるだけですむ。それで観客は所長が良心のとがめを受けてすべてを白状したと分る。デビッドが「刑務所長!」と一言言うだけである。ラストのアクションシーンにしても1987年7月7日のチャリティー試写会用のプリントを送り出した時点で撮影をやめてよかった。読者の中にはその試写会を見た人もあるかもしれないが既に十分にアクションがありきちんと結末もついていた。しかしジャッキーはもっとアクションをいれたかった。あの一作目時計塔、警察故事の電飾ポールのシーンに匹敵するあとあとまで語り草になるようなアクションを。クランクイン以来ずっと頭を痛め続けていたこの目玉シーンに関してプリントを送り出した時点でいいアイディアを思いついた。足場を使うのである。香港に来たことのある人は見る機会があったかもしれないが香港ではビル建築用の足場を昔ながらの竹で作っている。これを使うというのだ。これは確かに香港独自のもので高さも十分あって難度の高いアクションを撮るのにふさわしい。ジャッキーはすぐさま既に一部立ててあった足場の高さを足し補強してそれからさらに実に3週間も撮影してラストシーンを現在劇場で見られるようなものに仕上げたのだ。「A2」を仕上げたジャッキーは休むひまもなく続いてじかいさくの準備に撮りかかっている。一作ごとに進歩をみせるジャッキーが今後も俳優、監督としてのみならずプロデューサーとして大成することを期待してやまない。」